【保存版】特定技能制度|各業種ごとの要件と注意点を徹底解説(2025年版)

以前の記事で、特定技能と技能実習の違いについて言及しましたが、この記事では、特定技能について網羅的な情報を記述しました。

特定技能とは2019年に創設された「特定技能」制度は、日本国内で深刻化する人手不足の分野において、外国人材の受け入れを可能にする制度です。外国人が就労するためには、一定の技能試験や日本語能力の証明などが求められますが、業種ごとに定められた要件は非常に多岐にわたります。

ここでは、制度の概要とともに、各業種における受入れ要件・試験内容・注意点を詳細に解説します。

 1. 介護分野

  • 業務内容:入浴介助、食事介助、排泄介助などの身体介護から、レクリエーションの運営まで多岐にわたります。
  • 試験内容:介護技能評価試験、日本語能力試験(N4程度)もしくは国際交流基金日本語基礎テストに加え、「介護日本語評価試験」の合格が必要。
  • 注意点:特定技能介護は「特定技能1号」しか存在せず、在留期間更新は可能ですが、永住や家族帯同には制限があります。また、登録支援機関を通した支援が必須です。他分野と異なり、一定水準の「介護専門用語」の理解も求められるため、日本語の読み書き・会話力の両方が重視されます。

 2. ビルクリーニング分野

  • 業務内容:主に都市部のオフィスビルや商業施設の清掃作業が対象です。
  • 試験内容:モップや掃除機の扱い、洗剤の使い分け、安全衛生に関する知識などの実技試験と学科試験があります。
  • 備考:丁寧な作業と時間管理が重視され、作業指示を正確に理解するためにN4以上の日本語力が推奨されます。また複数名でのチーム作業が一般的で、現場ごとのルールや時間厳守が重視される点が特徴です。

 3. 工業製品製造業分野

  • 業務内容:金属部品の鋳造・鍛造・板金・仕上げ、機械の加工・組立、電子部品の製造、検査・梱包、製造設備の保守管理などが含まれます。生産ラインではスピードと正確性が重視され、工程ごとの標準作業書に従って業務を遂行する力が必要です。
  • 試験要件:工業製品製造業分野特定技能評価試験(旧・製造3分野共通)が課され、学科(安全衛生、製造工程の基礎知識)と実技(工具の使い方、作業手順)で構成されます。また、日本語能力はJLPT N4レベルまたは日本語基礎テストの合格が求められます。技能実習2号修了者であれば、同一職種に限り試験免除が認められています。
  • 注意点:マニュアルに基づく作業遂行能力、基本的な日本語理解(ひらがな・簡単な漢字)のある人材が求められます。安全管理の徹底が不可欠であり、工場ごとの労働環境や交代制勤務への適応も重要です。なお、本分野は特定技能2号の対象外のため、在留は最長5年、家族帯同は不可です。

    備考:工業製品製造業分野は、従来の「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」の3分野を統合した新しい区分で、部品の製造から組立、検査、保全まで幅広い製造工程が対象です。製造業における人手不足の深刻化を背景に、特定技能1号による即戦力人材の確保が求められています。


 4. 建設分野

  • 業務内容指導者の指示・監督を受けながら職種に準じた業務
  • 対象職種:型枠施工、左官、とび、電気設備、配管、内装仕上げ、建設機械施工など19職種。
  • 必要条件:建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が必須。企業側にも建設業許可や技能者の監督体制が求められます。
  • 試験内容:各職種に応じた技能評価試験(実技中心)および安全教育。
  • 注意点:特定技能の中でも最も複雑かつ規制が厳しい分野です。不法就労や偽装請負が発覚した場合、厳しい行政処分が下されることがあります。支援体制と現場管理をセットで構築する必要があります。

 5. 造船・舶用工業分野

  • 業務内容:様々な高い技能を求められる専門分野で、地方の造船所などが中心です。
  • 試験内容:溶接、塗装、機械加工、仕上げ、電装、鉄工などの実技を中心とした試験
  • 特徴:危険作業も多く、日本語での安全確認が重要なため、実務的な会話力も必要です。
  • 注意点:技能実習からの移行者が多く、既に溶接資格等を持っている者が優遇されます。各作業現場における防災教育も必須です。

 6. 自動車整備分野

  • 業務内容:整備工場やディーラーでの整備補助業務が中心です。
  • 試験内容:ブレーキ点検、オイル交換、車検整備補助などに関する実技と学科
  • 必要知識:自動車の構造、整備工具の取り扱い、整備記録の管理など。電子制御技術も含まれるため学習範囲は広め。
  • 注意点:国家資格(自動車整備士)ではないため、整備補助の範囲に留まります。顧客対応業務は含まれないケースが一般的です。

 7. 航空分野

  • 業務内容:空港内業務の中でも主に「地上支援作業」が対象です。手荷物の積み下ろし、航空機誘導、給油、清掃など
  • 試験内容:安全マニュアル遵守、無線通信の理解、荷物の仕分け作業など
  • 注意点:空港での勤務となるため、天候や時間帯による変則勤務・シフト制の対応が求められます。

8. 宿泊分野

  • 業務内容:フロント対応、ベッドメイキング、配膳、清掃など
  • 試験内容:接客マナー、日本語でのやり取り、宿泊業の基本知識
  • 注意点:日本語での「接客敬語」や苦情対応力が評価されることもあり、現場によって求められるレベルに差があります。

9. 自動車運送分野(新設)

  • 業務内容:配送トラックの運転、貨物の積み下ろし、配送先での顧客対応(※特定技能で認められるのは一定規模以下の車両)
  • 試験内容:安全運転技能や整備点検の知識を問う実技・学科試験。中型免許の取得が基本要件
  • 特徴:交通法令の厳守・時間厳守が重要。日本語での地理把握・指示理解が必須
  • 注意点:業務中の事故対応、保険手続き、荷主との連絡など、日本語での迅速対応が求められる

10. 鉄道分野(新設)

  • 業務内容:駅構内業務(改札・案内・放送)、車両清掃、保守補助、列車見張り作業
  • 試験内容:鉄道運行の基礎知識、安全規則、緊急対応に関する筆記+適性検査
  • 特徴:制服着用・正確な接遇が重視される。地方路線や観光列車など多様な現場がある
  • 注意点:言語ミスが事故に直結するため、日本語力はN3以上が望ましい

11. 農業分野

  • 業務内容:作物の栽培(野菜・果物・花卉など)、種まき、収穫、出荷準備、温室・露地での管理作業
  • 試験内容:農業分野特定技能評価試験(施設園芸・畑作)、農機具の取扱、安全衛生
  • 特徴:季節性の変動が大きく、冬季に雇用調整が必要な地域も。就業は早朝中心
  • 注意点:体力勝負であり、日本語での簡単な指示理解ができないと危険を伴う作業もある

12. 漁業分野

  • 業務内容:船上作業(網投入・引き揚げ)、養殖場での管理、魚の選別や出荷、道具の手入れなど
  • 試験内容:漁業技能評価試験(沿岸漁業・養殖業)、気象・潮流・漁具管理知識
  • 特徴:沿岸部・離島での生活を伴うことが多く、居住環境の支援が重要
  • 注意点:天候によるスケジュール変更や、危険を伴う作業への適切な理解と対応が求められる

13. 飲食料品製造業分野

  • 業務内容:食品加工・包装・検査、ライン作業、衛生管理
  • 試験内容:製造工程に関する知識、衛生(HACCP)管理、安全手順の理解
  • 特徴:工場ライン業務が中心で、正確性とスピードが重視される。単純作業だが継続力が問われる
  • 注意点:チーム作業が多く、伝達ミスによる製品不良などが発生しないよう日本語理解力が重要

14. 外食業分野

  • 業務内容:調理補助、ホール接客、会計、清掃
  • 試験内容:外食業技能評価試験(衛生管理、接客基本、調理知識)、N4相当の日本語力
  • 特徴:接客の現場では文化的な背景理解も問われる。日本独特の礼儀作法を教育する体制が求められる
  • 注意点:ピーク時対応、クレーム処理、勤務中の多言語対応が必要な場面もある

15. 林業分野(新設)

  • 業務内容:伐採、間伐、搬出、林道整備、造林作業
  • 試験内容:チェーンソー・刈払機の操作、安全衛生、森林管理の基礎知識
  • 特徴:山間地での作業が多く、体力と安全意識が不可欠。1人作業の比率が高め
  • 注意点:危険作業が多く、一定の日本語指示が理解できないと事故のリスクがある

16. 木材産業分野(新設)

  • 業務内容:製材、木材乾燥、加工、仕上げ、検品などの製造業務
  • 試験内容:木材の種類・性質、機械の操作、安全管理、品質管理など
  • 特徴:地方の中小企業での雇用が中心。作業現場の安全基準遵守が重視される
  • 注意点:粉じん対策や重機の取扱いなど、日本語での安全教育が徹底されている必要あり

■ おわりに

特定技能制度は業種ごとに非常に詳細な要件が定められており、単純な「外国人雇用枠」ではありません。採用を検討する企業側も、各業種特有のルールやリスクを十分に理解し、計画的な受け入れと支援体制の構築が不可欠です。

また制度自体が新しいことに加え、現在進行形で色々な業種が追加され続けていることから常に情報をアップデートしていく必要があります。

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