1. 特定技能ビザにおける国籍制限の有無
特定技能ビザの大前提として、「どの国籍でも在留資格を申請できる」仕組みが定められています。なので国籍は定められておらず、下記要件みたせばOKです。
- 該当する産業分野(全19分野)の技能試験に合格していること
- 日本語能力試験(N4相当以上)または同等の日本語試験に合格していること
- 受入れ機関(企業など)の要件を満たしていること
これらの要件をクリアすれば、国籍を問わず申請は可能です。ただし、新規の在留資格申請(国内転職者ではなく海外から受け入れる場合)だと、受験会場や試験実施手続きは、原則として後述する二国間協定を結んでいる国で行われるため、協定未締結国の方は自国で試験を受けられない場合があります。その場合、近隣の協定締結国や日本国内での試験(短期滞在ビザなどを利用して受験)を活用する必要があります。
2. 二国間協定(MOC)とは──なぜ必要なのか?
「二国間協定(協力覚書:Memorandum of Cooperation)」は、日本と外国送出し国との間で締結される取り決めです。本協定の主な目的は以下のとおりです。
- 送出し・受入れ手続きの明確化
特定技能外国人を安全かつ適正に送り出すため、送出し国の政府機関や認定機関が果たすべき役割や手続きを具体的に定めます。 - 外国人労働者の保護
不当な仲介業者(ブローカー)による搾取や悪質な手数料の徴収を防ぐため、保証金制度や適切な送出し機関の認定基準などを協定に盛り込みます。 - 情報共有および制度運用の円滑化
日本政府と送出し国政府が協力し、制度変更時の情報共有やトラブル発生時の対処フローを整備することで、結果的に企業・労働者双方の信頼性を高めます
協定締結国のほうが特定技能外国人として受け入れるためのフレームワークが用意されているイメージです。
3. 二国間協定を締結している国一覧
2025年3月時点で日本が「特定技能」に関する二国間協定を締結している国は以下です。
- フィリピン
- カンボジア
- ネパール
- ミャンマー
- モンゴル
- スリランカ
- インドネシア
- ベトナム
- バングラデシュ
- ウズベキスタン
- パキスタン
- タイ
- インド
- ラオス
- マレーシア
- キルギス
繰り返しになりますが、上記以外の国・地域(例:中国、ロシア、ブラジルなど)も特定技能ビザを取得すること自体は可能ですが、上記の協定締結国と比べて試験会場や送り出し手続きが整備されていないケースが多い点に留意が必要です。
4. 協定未締結国からの受け入れ方法
協定を締結していない国(例:中国、韓国、米国など)については、以下の方法で特定技能ビザを取得し来日できます。
- 日本国内で試験を受験する
2020年4月より「短期滞在」ビザで国内試験を受けるルールが導入され、現地で試験会場が整備されていない国の方でも、日本へ渡航して技能試験・日本語試験を受けることが可能になりました。 - 近隣の協定締結国で試験を受験する
隣国(たとえば韓国、台湾、タイなど)の協定締結国で試験を受験して合格し、その後に特定技能ビザを申請する方法もあります。
5. まとめ
- 特定技能ビザそのものに国籍制限はない
在留資格取得要件(技能試験、日本語試験、企業要件)を満たせば、どの国籍でも申請可能です。 - 二国間協定締結国の方が試験受験や送り出し手続きがスムーズ
2025年3月時点で協定を結んでいる16か国は送出し体制が整備されており、企業は安心して人材確保ができます。 - 協定未締結国からの受け入れも可能だが手続きが煩雑
日本国内試験の活用や近隣協定締結国での試験受験など代替策があるものの、費用やサポート体制の整備が必須です。 - 今後も協定締結国は増加する可能性が高い
少子高齢化が進む日本において、特定技能制度は外国人労働者の安定的確保策として欠かせません。引き続き最新の二国間協力覚書を確認し、自社の採用戦略に活かしましょう。
以上、特定技能ビザで来日できる外国人の国籍に関する仕組みと、協定締結国一覧・協定の内容について解説しました。企業・受入れ機関の皆さまは、自社のニーズに合わせて協定状況を常にウォッチし、適切な人材活用を図ってください。不明点などがあればお気軽にお問い合わせください。
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