「N3って、実際どこまで話せるの?」
「N2があれば、ビジネスも大丈夫?」
「N4レベルだと、現場で通じるのかな?」
外国人採用の現場では、日本語力を測る指標として上記の会話が日常的に行われています。先にお伝えしておくと大前提としてJLPTは世界的にも有名な日本語試験ですが、「読む・聞く」中心の試験であり、「話す」能力は評価対象ではありません。そのため、合格=即戦力とは限らないのが現実です。特に面談時にN3って聞いていたのに結構コミュニケーション力が厳しいかも??と印象をうけることもあるでしょう。
外国人材の受け入れを考える企業にとって、日本語能力試験(JLPT)の各レベルが実際の業務にどれだけ通用するのかは大きな関心事です。
本記事では、一般論としてN2〜N4レベルの日本語能力者が実際にどれくらい話せるのか、現場でどんな対応ができるのかを、具体的なコミュニケーション事例とともにご紹介します。
JLPTとは?簡単なおさらい
JLPT(Japanese Language Proficiency Test)は、日本語を母語としない人向けの試験で、N5〜N1までの5段階に分かれています。
レベル | 難易度 | 特徴 |
---|---|---|
N1 | 最難関 | 高度な新聞・ビジネス文書が理解可能 |
N2 | 上級 | 日常会話〜ビジネス会話に対応可能 |
N3 | 中級 | 基本的な会話・読解が可能 |
N4 | 初中級 | ゆっくりした日常会話に対応可能 |
N5 | 初級 | あいさつや簡単な表現を理解できる |
N4:身の回りのことが話せる「初級の壁」
■ 特徴
- 語彙:約1,500語
- 文法:基本文型(〜です/〜ます)と簡単な過去形、否定形など
- 聴解:ゆっくりした口調での会話なら理解可能
■ 実際の場面
例:寮での生活会話
「ごみはあした出します」「ごはん、いっしょに行きますか?」など、生活に密着した会話には対応できます。
例:工場での単純作業
「これ、ひとつずつ入れてください」「ストップ、あぶない!」など、短い命令や注意喚起には反応できることが多い。
■ 限界点
- 状況判断やイレギュラー対応には不安あり
- 説明を受けるより「見て覚える」形式の指導が必要
■ 採用のポイント
**体を動かす作業が中心の現場仕事や介護補助など、言語負担が少ない業務には適応可能。**ただし、丁寧なOJTと視覚教材が必須です。
N3:簡単な業務会話に対応できる「実務入り口レベル」
■ 特徴
- 語彙:約3,000語
- 文法:中学レベルの文型を網羅、簡単な敬語にも触れる
- 聴解:丁寧に話せば会話可能
■ 実際の場面
例:飲食ホールスタッフ
「お水、いかがですか?」「こちら、メニューです」などの接客は可能。忙しい時間帯の複雑な注文や変更には混乱も。
例:介護施設での誘導
「こちらへどうぞ」「トイレに行きますか?」などの基本対応は問題なし。
■ 限界点
- 早口や複雑な表現には弱い
- 電話対応やクレーム処理などの即時判断は難しい
■ 採用のポイント
接客・製造・軽作業系では十分に活躍可能。ただし、言い換えや繰り返しを意識した指示が効果的です。
N2:幅広い業務対応が可能な「実践レベル」
■ 特徴
- 語彙:約6,000語
- 文法:上級文型(〜ように、〜ながら、受け身・使役)を理解
- 聴解:通常スピードでも内容把握が可能
■ 実際の場面
例:事務職での業務依頼
「この資料、月曜までに仕上げてください」「先方に確認して、結果を報告してください」など、ある程度の抽象性や指示内容にも対応。
例:現場リーダーとの報連相
「昨日の作業で問題がありました」「新しいパートさんに説明しました」など、現場のやりとりもスムーズにこなせる。
■ 限界点
- 難解なビジネス文書や専門用語には個人差
- 長時間の議論や交渉にはやや課題も
■ 採用のポイント
事務、現場管理、社内コミュニケーションを要する職種にも十分対応可能。 定型外の会話もこなせるため、幅広い配属先で活躍が期待できます。
N1:高度な読解力と語彙力、でも会話は“万能”とは限らない
■ 特徴
- 語彙:約10,000語以上
- 文法:日本人でも難しい表現(仮定法・敬語・論理構造)までカバー
- 聴解:ニュース・ビジネス会話も理解可能
■ 実際の場面
例:ビジネス文書の読解・作成
就業規則、契約書、法律文などの読解や要約が可能で、メールやレポートも高度な日本語で作成可能。
例:会議や商談の参加
複雑な議題にもついていけるが、発言が少ない/表現が硬いといった「話し方の個人差」も出やすい。
■ 限界点と注意点
- 日本語が“正確すぎて”硬く聞こえることがある
- 話し慣れていないと、会話にぎこちなさが残ることも
■ 採用のポイント
N1=完璧ではなく、実務力・性格・文化理解を含めた総合評価が必要。
N1であっても、ビジネスマナーや日本独特の「察し文化」への理解が浅ければギャップが生まれます。
ちなみに現場系の労働がメインの採用のシーンでN1保持者は見かけることはありません。
実際の会話力は“個人差”が大きい
JLPTレベルはひとつの目安ですが、実際の会話力や応用力は「学習歴」や「母語環境」「性格」にも大きく影響されます。N3保持者でもよく話せる人もいれば、N2保持者でも黙りがちな人もいます。
採用の際のチェックポイント
- 面接時に「聞く・話す」の実演を含める
- 現場体験やトライアルで実務適性を確認
- 専門用語の教育やサポート体制の構築
まとめ:レベル別 会話力のイメージ比較表
レベル | 会話内容 | 業務対応力 |
---|---|---|
N4 | 挨拶・身の回りの会話 | 単純作業や補助業務に対応 |
N3 | 定型的な業務会話 | 接客・軽作業は可能 |
N2 | 業務会話・報連相 | 事務・管理職も対応可 |
JLPTスコアだけでは測れない“実践力”の見極めが、外国人材活用のカギです。
正確な日本語力の評価と、それに応じた配置・教育体制を整えることで、外国人スタッフが安心して長く働ける環境を整えることができます。 また、日本語試験の勉強のために習得するよりも日本国内で実際に仕事をしながら身につけるほうが習得は早いのはいうまでもありませんので、習得意欲がどの程度あるか?などポテンシャルを測ることも重要かと思います。
コメント