日本には、多様な外国人が生活しており、その在留資格もさまざまです。大きく分けると「就労系」と「身分系」の2つに分類され、今回取り上げる「身分系在留資格」は、その人の出自や家族関係などの“身分や地位”に基づいて与えられる在留資格です。
この身分系資格の最大の特徴は、原則として就労制限がないことです。すなわち、職種や労働時間に関係なく、自由に働くことが可能であり、企業にとっても採用しやすい在留資格と言えます。以下では、入管法に定められた「別表第二」に記載されている主な身分系資格について、わかりやすく解説します。
【別表第二:身分に基づく在留資格一覧】 ※出入国在留管理庁より
在留資格名 | 対象者の範囲 | 主な在留期間 | 就労の可否 | 備考・特記事項 |
---|---|---|---|---|
永住者 | 永住が認められた外国人 | 無期限 | ○(制限なし) | 生活基盤の安定や納税状況などが要件。10年以上の在住歴が原則。 |
日本人の配偶者等 | ・日本人の配偶者 ・日本人の実子 ・日本人の特別養子 | 6か月、1年、3年、5年 | ○(制限なし) | 離婚・死別時には在留資格変更が必要な場合あり。婚姻の実態も重視される。 |
永住者の配偶者等 | ・永住者または特別永住者の配偶者 ・その子(日本出生) | 6か月、1年、3年、5年 | ○(制限なし) | 永住者との関係性が前提。関係解消時には更新・変更が求められる。 |
定住者 | 法務大臣が個別に定めた者(日系人、離婚後の子の養育者など) | 1年、3年、5年 | ○(制限なし) | 日系人、難民、その他特別な事情が考慮される。指定内容の確認が重要。 |
各在留資格の特徴と留意点
- 永住者
「永住者」は、生活基盤が日本にあり、長期にわたり安定した在留実績がある者に与えられる資格です。無期限かつ就労制限がなく、日本社会での信頼も高いため、企業からも採用ニーズが高い層です。なお、永住申請時には、継続的な収入や税務・年金の適正な履行が重要視されます。もちろん帰化とは別の概念で法律的な地位も異なります。 - 日本人の配偶者等
日本人との婚姻や、実子・養子であることを理由に在留が認められる資格です。就労の自由があり、雇用の自由度も高いですが、在留の根拠が「婚姻等の関係性」であるため、関係解消時には資格変更を求められることもあります。企業は継続在留の可否について、在留カードの確認を通じて注意する必要があります。 - 永住者の配偶者等
永住者や特別永住者と結婚している外国人、またはその子どもが該当します。権利は「日本人の配偶者等」とほぼ同様ですが、配偶者の永住資格に依存している点で注意が必要です。特に、配偶者との離別や死別によって、在留の根拠が失われるケースもあるため、在留資格変更の可能性も念頭に置いておきましょう。 - 定住者
「定住者」は多様な背景を持つ外国人に対して与えられます。たとえば、日系人(2世・3世)や、日本人との間に生まれた子を養育する外国人の親、日本での人道的理由により在留が認められたケースなどが該当します。入管から発行される「指定書」には活動内容等が個別に記載されていることがあるため、採用前には確認が不可欠です。
企業が採用する際のポイント
身分系在留資格を持つ外国人の採用は、基本的に在留資格の変更や追加許可を必要とせず、企業側の手続き負担も少ないのがメリットです。特に、職種や就業内容に制限がないため、アルバイトから正社員まで、幅広い採用が可能です。
一方で、在留資格の根拠となっている婚姻関係や親子関係に変化があった場合には、当人の在留資格が変動する可能性があるため、定期的な在留カードの確認やヒアリングを通じた支援体制が必要です。
まとめ
身分系在留資格は、日本社会に定着し、長期的に生活・就労する外国人に多く見られる資格であり、企業にとっては安定的かつ柔軟な人材確保の手段となります。採用にあたっては、在留カードの内容を丁寧に確認し、在留の安定性と生活背景を理解することで、より良い雇用関係が築けるでしょう。
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