特定技能2号の拡大が外国人採用を変える

 2025年以降日本の外国人採用に大きな転換点が訪れています。2019年から開始された特定技能制度で、5年間の1号の期間を満了した方々から「特定技能2号」への移行が進み、2号取得者をみかけるようになってきました。

特定技能2号については、当初は限定的な産業だけが対象であったのが、段階的に、介護・製造・外食・宿泊など主要分野へ大きく拡大し、直近追加された、「自動車運送」、「林業」、「鉄道」、「木材産業」4カテゴリをいれると16分やとなり採用企業にとっては長期戦力を確保できる重要な手段となります。

 特定技能2号は永住にもつながる在留資格で、企業側にとっての最大のメリットは「長期雇用の安定性」と「定着率の高さ」です。採用競争がより激しくなる2025年以降、2号の活用を前提とした採用戦略が標準化する可能性があります。一方、一部不法就労の在留外国人が社会問題化しており、世論や政府動向にも注視が必要です。

 本記事では、最新の制度動向を踏まえながら、企業が理解しておくべき特定技能2号の基本、対象分野、メリット、注意点、そして今から準備すべき採用戦略まで、わかりやすく解説します。


特定技能2号は「長期雇用の資格」

 特定技能1号は「基礎レベルの技能」で、多くの業界で広く受け入れられている一方、在留期間は最長5年(基本1年ごとの更新で最大5年という意味)に制限され、家族帯同も認められていません。採用しても、特定技能での就労が数年経過した人材であれば、5年満了になる頃に、2号への移行または他の在留資格の取得ができない限り帰国する選択肢しかなく、採用企業にとっては長期的な計画が立てづらいという課題があります。

 一方、特定技能2号は「熟練レベルの技能」を要件とし、在留期間に上限がなく、家族帯同も認められる高度な在留資格です。特定技能1号の上位に位置づけられ、5年以上の就労での在留は永住申請の要件の一部にもなります。(もちろん、永住については定量的な要件だけでなく、素行など含めた定性的要件も含まれます。)そのため、2号取得者は「日本で長く生活する」ことを前提としていると解釈でき企業にとっては非常に高い定着率が期待できます。


企業が特定技能2号を活用するメリット

特定技能2号の最大の利点は「長期雇用による安定性」です。ここでは企業にとって特に実務的なメリットを整理します。

1. 在留期間に上限がなく、長期戦力として育成できる

 特定技能1号のような「5年制限」がないため、育成コストの回収がしやすくなります。時間をかけて業務の幅を広げても、本人が5年で帰国する心配がありません。(もちろん日本で在留する意思があることが前提)

2. 家族帯同が可能になり、定着率が非常に高くなる

 家族帯同は外国人本人にとって大きな安心材料です。家族が日本に住むことで生活基盤が安定し、転職や離職のリスクが大幅に下がります。「長く日本で働きたい」という志向の強い人材が多く、企業の安定運営に貢献します。

3. 即戦力化しやすい人材を確保できる

 2号は熟練技能が要件となるため、一定の経験や業務理解を持つ人材が多く、育成コストを抑えながら現場で活躍してもらえます。特に製造・介護・外食などでは、戦力化までのスピードが向上します。


特定技能2号を扱う際の企業側の注意点

メリットが大きい一方で、制度運用には注意すべき点もあります。

1. 登録支援が不要でも、生活サポートは必要な場面が多い

 2号は1号と異なり支援機関からの「支援計画」の提出義務がありませんが、企業側が一切サポートしなくてよいという意味ではありません。家族帯同者の生活に関わる相談、住宅確保の課題、行政手続の不安など、現場では支援ニーズが引き続き発生します。適切な対応を怠ると、外国人本人の離職や生活トラブルが広がり、結果的に行政指導の対象になるケースもあり、実務的には結局1号と同じようなサポートを継続して行うケースも多いようです。

2. 1号から2号への移行ルートが複雑化する可能性

 「必要な技能試験はどれか」「経験年数はどこまでカウントされるのか」など、1号からの移行要件は分野ごとに異なります。制度が正式に整備されるにつれて内容が更新されるため、企業が独自に追うのは負担が大きい領域です。

3. 家族帯同が可能になることで住宅確保が難航しやすい

 家族帯同となると、単身向けの1Kや1DKではなく、2DK〜3DK以上を希望するケースが増えます。しかし、外国人家族の賃貸審査は地域によっては依然としてハードルが高くサポートが必要なシーンが生まれます。


2025年に向けて、企業が準備すべき採用戦略

 特定技能2号の拡大は、単なる制度変更ではなく「中長期の採用戦略そのもの」を大きく変えます。ここでは企業が今から準備すべき3つのポイントを紹介します。

1. 今いる特定技能1号人材を“2号候補”として育成する

 特定技能2号を最も効率的に確保する方法はすでに雇用している1号人材を育成し、本人とともに2号取得の共通ゴールを目標とする方法です。必要な業務経験、試験スケジュール、評価制度などを整理し、計画的に成長させていくことで、最小のコストで長期戦力を確保できます。

2. 「2号候補」を積極的に採用する

 単純な話ですが、2号を持つ候補者が現れたら積極的に採用をすることです。自社業務さえ覚えてしまえば即戦力化できますし、他の1号をもつ方達への良い手本になれる可能性もあります。

3. 採用・ビザ実務・定着支援を一体で管理する

 特定技能2号では「採用した後のマネジメント」が重要になります。つまり、外部要因として長期就労できる要件はそろったので、今度は働く本人がその会社を好きになってもらい長期で働いてもらうような働きかけが重要になります。定着支援を切り離さず、一体で管理できる体制づくりが有効です。

まとめ

 特定技能2号の対象拡大は、多くの業界にとって「採用の構造変化」をもたらします。
特に製造・飲食・介護・宿泊などの分野では、日本人だけで人材確保を行うことが困難になっており、長期的に働ける外国人材の存在は企業運営にとって不可欠になりつつあります。

特定技能2号制度は、単なる制度拡大ではなく、「長期的な人材戦略の再設計」の機会でもあります。

最近の記事
おすすめ記事
人気の記事
  1. 特定技能2号の拡大が外国人採用を変える

  2. 家族滞在の在留資格の就労可否とその詳細

  3. 外国人を採用するときに考えること:技能実習・特定技能・無期正社員・アルバイト・派遣の特徴とコスト感

  4. 外国人って派遣労働ってしていいの?

  5. 【業界動向シリーズ:建設業界】外国人採用の実情とこれからの採用動向

  6. 倉庫、物流業界における外国人材の活用とは?

  7. 【業界動向シリーズ:飲食業界】外国人採用の実情・課題・今後の展望を徹底解説

  8. 特定技能で来日する外国人の国籍は限定される?二国間協定とは?

  9. 外国人採用時に押さえておくべき各国の年間行事と帰国タイミング

  10. N2?N3?N4?日本語能力試験って実際のところどこまで話せる?

  1. 特定技能2号の拡大が外国人採用を変える

  2. 外国人って派遣労働ってしていいの?

  3. 身分系在留資格って?どんな種類があってその詳細は?

  1. N2?N3?N4?日本語能力試験って実際のところどこまで話せる?

  2. 日本における在留外国人の国籍別トレンド(令和6年末時点)

  3. 家族滞在の在留資格の就労可否とその詳細

  4. 外国人って派遣労働ってしていいの?

  5. 倉庫、物流業界における外国人材の活用とは?

  6. 特定技能2号の拡大が外国人採用を変える

  7. 身分系在留資格って?どんな種類があってその詳細は?

  8. 【保存版】特定技能制度|各業種ごとの要件と注意点を徹底解説(2025年版)

  9. 技術・人文知識・国際業務(通称、技人国)の在留資格で外国人を採用する際の注意点とは?

  10. 特定技能で来日する外国人の国籍は限定される?二国間協定とは?

関連記事