外国人材の採用は、人手不足に悩む日本企業にとって重要な経営戦略となっています。しかし、外国人を採用する方法は複数あり、それぞれに特徴と課題が存在します。本記事では、「技能実習」「特定技能」「無期正社員(技術・人文知識・国際業務ビザ)」「アルバイト」「派遣」の5つの主要な採用方法について、特徴・コスト・メリット・デメリットを整理します。
1. 技能実習制度
概要
開発途上国の若者に日本の技能を習得させる国際協力制度で、最大5年までの在留が可能です。
メリット
- 受け入れ実績が多く制度として成熟している
- 比較的低コストで採用可能
- 団体監理型では手厚い支援が受けられる
デメリット
- 職種や業務内容が限定される
- 本人の自由意志で職場を変えることができない
- 日本語能力や業務理解が不十分なケースも
- 2027年には制度が終了
コスト感
- 監理団体費用:約3〜5万円/月
- 初期費用:約30〜50万円(渡航・教育など)
2. 特定技能制度
概要
14分野の業種に対して、技能試験と日本語試験に合格した外国人を最長5年まで雇用できる制度。
メリット
- 即戦力として採用しやすい
- 職場間の転職が可能で柔軟性がある
- 生活支援を外部委託できる(登録支援機関)
デメリット
- 生活支援・行政対応の負担が企業に課される
- 定着を保証するものではない(転職可能)
コスト感
- 登録支援機関費用:2〜5万円/月
- 初期費用:約30〜50万円(渡航、試験など)
- 給与:日本人と同等以上
3. 無期正社員(高度人材や留学生からの就職)
概要
高度なスキルや資格、日本の大学・専門学校の卒業者などを対象に、技術・人文知識・国際業務ビザで無期正社員として採用。
メリット
- 長期的な人材育成と活用が可能
- 職務範囲が広く、戦力になりやすい
- キャリア志向のある人材が多い
デメリット
- 採用競争が激しい
- 文化的・言語的ギャップが業務に影響することも
コスト感
- 給与:日本人正社員と同等またはそれ以上
- 採用コスト:30〜80万円程度(紹介・求人広告)
4. アルバイト(留学生など)
概要
留学生等が「資格外活動許可」を取得して、週28時間以内で働く雇用形態。飲食や小売などに多く見られます。
メリット
- 柔軟な人員配置が可能
- 比較的手軽に雇用できる
- 日本語学校や大学に通う若者が多く、成長意欲が高い
デメリット
- 週28時間の制限があり、フルタイム不可
- 学業との両立によるシフト制限あり
- 長期雇用が難しい
コスト感
- 時給:地域の最低賃金〜1,200円程度
- 採用費:求人広告、紹介料などで5万〜20万円
5. 派遣社員(人材派遣会社を通じた雇用)
概要
派遣元(人材会社)が雇用主となり、企業は「派遣先」として労働力を一定期間利用する形態。建設・製造・物流業界などで一部利用されています。
メリット
- 採用・労務管理の負担を軽減できる
- 短期・中期の人材確保が可能
- 欠員補充が迅速
デメリット
- 派遣対象業種・職種が限定されている
- 派遣料金が高く、コストは比較的割高
- 企業文化への定着が進みにくい
コスト感
- 派遣料:時給×1.5〜1.8倍が一般的
- 人材会社への契約料が発生
まとめ:自社に合った雇用形態の選択が重要
外国人を採用する方法には多様な選択肢があり、各形態ごとに目的・人材レベル・定着性・コストが大きく異なります。短期的な戦力確保なら派遣やアルバイト、長期的な戦力育成を重視するなら無期正社員や特定技能、制度的支援が必要なら技能実習など、自社の目的と現場の実情に応じて最適な採用方法を選ぶことが重要です。
近年は特定技能や育成就労制度など、新たな制度も整備されてきており、今後は制度の多様性を活かしながら、戦略的な人材活用が求められます。