公開日:2025年6月5日
1. はじめに:深刻な人手不足に直面する建設業界
日本の建設業界は、かねてより高齢化と若年層の業界離れにより、慢性的な人手不足に悩まされてきました。国土交通省の統計によれば、技能労働者の平均年齢は50歳を超えており、10年以内に多くの熟練者が引退すると見られています。こうした背景のもと、外国人労働者の受け入れは、もはや選択肢ではなく「必然」となりつつあります。
2. 外国人採用の制度的枠組み
現在、建設業で外国人が働ける主な在留資格は以下の3つです。
- 技能実習制度(建設分野は約20職種が対象)
- 特定技能1号(建設分野は型枠施工、鉄筋施工など11区分)
- 技術・人文知識・国際業務(施工管理技士など高度人材)
特に特定技能制度は、2019年の導入以降、国内外の人材を中長期的に雇用できる制度として注目を集めています。今後、技能実習制度の廃止と「育成就労制度」への移行が進めば、建設業における外国人労働者の位置づけも大きく変わっていくでしょう。
3. 現場での実情:外国人労働者が担う役割
現場では、外国人技能実習生や特定技能外国人が、解体、型枠、鉄筋、左官、塗装、配管などの作業に従事しており、すでに欠かせない戦力となっています。ベトナムやインドネシア、ミャンマーなどからの人材が中心で、日本語レベルや文化理解度はさまざまです。
一方、彼らの貢献にも関わらず、長期的なキャリアパスが描きづらく、受け入れ企業側の教育・定着支援体制も十分とは言えない現状があります。
4. 建設業界における外国人採用の課題
以下のような課題が現場で頻繁に指摘されています。
- 言語の壁:現場での安全指示や施工内容の伝達に支障をきたすことも
- 文化・宗教の違い:生活習慣や就業態度に関する相互理解不足
- 法的手続きの煩雑さ:ビザ取得、在留管理の負担が大きい
- 教育・研修の遅れ:実務に直結する技能教育の体系化が不十分
- 定着率の低さ:待遇や環境によっては途中帰国や転職のリスクも
また、一部の企業では外国人労働者の「使い捨て」的な扱いが問題となり、行政指導が入るケースもあります。今後は人材の「確保」だけでなく、日本人採用と同様に「育成」「活用」「共生」がキーワードとなっていくでしょう。
5. 今後の採用動向と制度の変化
国は2027年までに育成就労制度への一本化を予定しており、これにより技能実習制度は段階的に廃止されます。建設業でもこの流れは大きな転換点となり、外国人を単なる労働力ではなく「育成対象」として受け入れる姿勢が問われます。
また、技能検定の標準化、日本語学習支援、生活サポートの充実など、制度的な支援も拡充されていく見通しです。これに伴い、採用だけでなく「受け入れ後のフォロー体制」が企業の外国人を採用する際の競争力の一部として評価される時代が来るでしょう。
6. 外国人採用で成功する企業の特徴
建設業で外国人採用に成功している企業は、以下のような取り組みを行っています。
- ✔ 日本語教育の提供や学習環境の整備
- ✔ 多言語のマニュアル・安全指導資料の作成
- ✔ 生活支援(住居、医療、通訳)の充実
- ✔ 昇進・評価制度への外国人の明確な組み込み
- ✔ 現場リーダー層への異文化理解研修
特に重要なのは、「外国人=補助的な存在」という固定観念を取り払うことです。日本人と同じようにキャリアを築ける仕組みがあるかどうかが、今後の人材定着に直結します。
7. まとめ
建設業界における外国人採用は、量的確保から質的活用へと大きく舵を切る段階に入っています。制度の変化に柔軟に対応し、企業としての受け入れ力を高めることで、真に有能な外国人材を育成し、長くともに働ける環境を構築することが求められています。
今後は「安価な労働力」ではなく、「成長するパートナー」として外国人を迎えることが、建設業の未来を支えるカギとなるでしょう。
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